コラム

インターンシップは3つのタイプに分類される/室長コラム

インターンシップほど、関係する人や組織によって理解や目的が異なる活動も珍しい。“ミライシップ”はインターンシップを行っている組織だが、大学生や企業、大学関係者などに会うとそれぞれ捉え方に違いがあることを知る。そこで今回はインターンシップを3つのタイプに分類して解説する。

■文科省「インターンシップに関する調査研究協力会議」のまとめ

文科省が昨年より開催していた「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議(以下、調査協力者会議と略す)」は、本年6月に議論をまとめた。その中にはインターンシップを取り巻く背景やあり方、推進などについて記されているが、実業界が最も反応したのが「就職・採用活動との関係」であっただろう。それは「就職・採⽤活動の早期化・⻑期化につながるようなことは避けるべきであるため、インターンシップが就職・採⽤活動そのものとして⾏われることのないようにする」と記されていたからだ。これが公表されるとメディアやインターネット上では批判が起こり、私が関係する企業でも現実を捉えていないといった声が聞かれた。そして、これでは企業の負担ばかりが増えてインターン生を受入れる理由がないといった声もあがった。

■インターンシップの意義

インターンシップは受入れる企業が存在してはじめてできるものである。よって、企業の声を聞くことが大事になるが、調査協力者会議のまとめでは学生・大学等・企業の3つをあげた上で各々の“意義”が記されている。そのなかで企業にとっての意義は8つ記されているが、そこに“良い人材の採用ができる”とは記されていない(「就業希望の促進」は記されている)。これは意義というまとめ故に記されなかったことだと思われるが、企業に対して導入への理解を求めたいのならば“メリット”を提示することが必要だ。私は経済産業省や環境省が進める事業で企業などの参加を促す取組みの検討委員を務めたことがあるが、法などでコントロールできないものについては意義でまとめたい気持ちはよく分かる。しかし、意義では企業の活動は拡がらないし、どうしても限界がある。特にビジネス環境が厳しく、自社で新人教育をする余裕がなくなった企業はそれを大学に求めるようになった。この変化は多くの大学関係者が共有するものだろうが、だからこそ近年の大学では社会で役立つ人材教育に注力するようになった。そうしたなか、企業が利害のない学生を受入れる余力はないし、受入れる動機も生まれない。これではどうしても企業のインターンシップへの理解は進まない。だから、意義ではなく“メリット”を提案することが必要になる。

■企業にとってのメリットとは

企業にとってのメリットとは第一に優秀な人材の採用に繋がることである。それはインターンシップを担当している部署を見れば分かることで、たいていが人事部の業務になっている。もし、意義や社会貢献でインターンシップを行うのであればCSR部が担当していることだろう。
それでは人事部の役割とは何か?それは最適な人材配置を行うことであり、学生に対しては社員となって働く優秀な人材の採用にある。その他には労務管理や能力開発などがあるが、これらは学生のインターンシップを受け入れる主たる理由にはなり難い。
企業には様々な部署があり、各々目標を設定して活動している。そうしたなかで人事部がインターンシップを担当している以上、直接・間接は問わずに「採用に繋がるからやっている」が一番の目標であり本音で、それを無視したインターンシップのあり方をまとめることは現実的ではない。

■ミスマッチを防ぐにはインターンシップ

ところで若者の就職について、ここ数年問題になっていることに3年以内に3割の新入社員が離職することがある。これは採用する側(企業)と採用される側(学生)との間にミスマッチがあることが大きな要因で、これを防ぐことが雇用における最重要課題の一つとなっている。
それでは、ミスマッチを防ぐにはどうしたら良いのか?これを企業の人事担当者と検討すれば、はじめにあがってくるのはインターンシップの実施である。新卒採用は、[会社説明会→筆記試験→1次面接→2次面接→最終面接]といったプロセスで行われるのが一般的だが、この中には学生が企業の仕事を体験する時間はないし、社員とじっくり話す機会もない。そして企業もまた学生のことをしっかりと見極める時間が少なく、適性を深く理解することもできない。つまり、一般の採用方法では相互に相手をあまり理解できないままに雇用契約を結びやすく、ここに実際に働いてみるとお互いにミスマッチが生まれやすいリスクがある。こうした不幸な関係を防ぐには第一に時間をかけてお互いを知ることが必要で、そのための効果的な取組みはインターシップだと言えよう。

■インターンシップは3つに分類される

現在、インターンシップには様々なタイプが存在している。それは法人形態であれば企業をはじめ、行政、NPO、教育機関なども実施しているし、業種では製造業、IT、メーカー、サービス業など、ほぼ全てと言って良いほどに様々な業種が実施している。そして職種では経営企画、マーケティング、営業、販売などがあり、さらに長期・短期といった期間の違いや有給インターンシップといった給与の出るものもある。
このように多様なインターンシップがある状況にあって、学生たちは見極めが難しいと言う。そこで私は学生の立場からメリットで見るとインターンシップは3つのタイプに分類されると説明している。それは、「仕事(会社や業界)を知るインターンシップ」、「就職の採用につながるインターンシップ」、「スキルを身につけるインターンシップ」の3つである。

まず、「仕事(会社や業界)を知るインターンシップ」だが、これは学生が仕事や業界への理解が進むものであり、多くの企業でPRしているものである。そしてこのタイプは大学がコーディネイトするインターンシップでもよく見られる。続いて「就職の採用につながるインターンシップ」は、あまり表だってPRをされてはいないが実際に存在しているものだ。こうしたリアルな実態については大学生もよく知っており、「あの企業はインターンシップを経験しないと採用されない」や、「インターンシップの後に社員から食事に誘われたら内定が取れる」といった情報も広がっている。最後に「スキルを身につけるインターンシップ」だが、これは数こそ少ないが学生のスキルアップを本気で考えているプログラムである。具体的には受入れ企業で実際に発生した課題に対して、学生たちがグループワークで分析。その解決策を提案することや一緒に仕事をすることなど、リアルな学習の場を用意しているもの。社会人になる前の学生時代にしておいた方が良いことを現役社員がアドバイスするもの。そして仕事とキャリアについて人事部が教えるものなど、学生への教育を中心に考えられたものである。
このようにインターンシップを3つに分類すると学生はすっきりと理解できるようで、その後に自分が学びたい、得たい目的にあったインターンシップを選べば間違いはないとアドバイスしている。

■今後のインターンシップについての議論

多様化するインターンシップにおいて、あり方を決めるのはとても難しい。しかし、このまま放置することもできないだろう。調査協力者会議の「インターンシップが就職・採⽤活動そのものとして⾏われることのないようにする」とのまとめには批判が起こったが、しかし逆に採用活動を認めると就職活動の早期化に繋がり、それもまた批判が起こったと思われる。よって、インターンシップの議論は必要だが、多くの人から理解を得るのは難しいものだと言える。
しかし、そうした中で喫緊に議論をスタートし、多くの人に理解されると思うものに「学生を守ること」がある。それはインターンシップに関わる人が一度は聞いたことがあると思うが、近年、労働搾取型のインターンシップが見られるようになっているからだ。それらは「ブラックインターンシップ」と呼ばれ、学生たちのなかにも徐々に知られる存在になっている。ブラックインターンシップは現在のところまだ少数なようだが、ブラックバイトの被害者が増える現状を見れば、この先に被害を受ける学生が増えることは容易に予想される。そしてそれは新たな社会問題となるだろう。次回はこのブラックインターンシップについて論じる。


野村 尚克(NAOKATSU NOMURA)

Causebrand Lab. 代表
ミライシップ プログラム開発室 室長

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